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東京地方裁判所 昭和41年(行ク)24号 決定 1966年6月09日

申立人(緊急命令被申立人) 国

被申立人(緊急命令申立人) 中央労働委員会

主文

当裁判所が、昭和四一年(行ク)第一五号緊急命令申立事件について昭和四一年四月一二日になした決定を、左のように変更する。

被申立人は、当庁昭和四一年(行ウ)第六号事件の判決確定に至るまで、申立人が昭和四〇年一二月二二日付同年(不再)第一七号事件につきなした命令中、東京都地方労働委員会が都労委昭和三九年(不)第八号不当労働行為申立事件についてなした救済命令のうち、東京都知事において大山隆を原職に復帰させ暫定出勤停止処分を受けた日の翌日から原職に復帰するまでの間に同人が受けるはずであつた賃金相当額から二二〇、二九五円を控除した金員を支払わなければならないとの部分に関し再審査申立棄却の命令に従わなければならない。

(裁判官 駒田駿太郎 高山晨 田中康久)

緊急命令取消申立

申立の趣旨

御庁が緊急命令申立人中央労働委員会緊急命令被申立人東京都知事間の昭和四一年(行ク)第一五号緊急命令申立事件について、昭和四一年四月一二日なした命令中、昭和三九年一〇月から昭和四〇年二月までおよび昭和四〇年八月から昭和四一年二月までの間につき申立外大山隆が受けるはずであつた賃金相当額を支給しなければならない旨の命令に従わねばならない旨を命ずる部分を右期間申立外大山隆が受けるはずであつた賃金相当額から別表「他に就職して得た賃金」欄記載の金員を控除した金員を支払わねばならない。に変更する。

との決定を求める。

申立の理由

一、御庁昭和四一年(行ク)第一五号緊急命令申立事件において、御庁は昭和四一年四月一二日、本件申立人に対し「被申立人は、当庁昭和四一年(行ウ)第六号事件の判決確定に至るまで、申立人が昭和四〇年一二月二二日付同年(不再)第一七号事件につきなした命令(「東京都知事は大山隆を原職に復帰させ、暫定出勤停止処分を受けた日の翌日から原職に復帰するまでの間に同人が受けるはずであつた賃金相当額を支給しなければならない。」)に従わなければならない。との命令を発した。

二、然るに申立外大山隆は、暫定出勤停止処分を受けた後昭和三九年一〇月から昭和四一年二月までの間(たゞし昭和四〇年三月から同年七月までは除く)他に就職し、別表記載のとおり合計金二二〇、二九五円の賃金を得ている。従つて救済命令および緊急命令においては、当然この点を考慮して支払額から控除すべきものであつたと考える。即ち、使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得たときは、右の利益が副業的なものであつて、解雇がなくても当然取得しうる等の事情がない限り民法五三六条二項但書に基き使用者に償還すべきものとするを相当とする。しかうして右償還の方法は、決済手続を簡便ならしめるため、使用者が支払うべき賃金から、労働基準法二六条の趣旨に鑑み賃金の四割の限度において右償還金額を控除すべきものと解すべきである(昭和三七年七月二〇日最高裁判所第二小法廷判決、民集一六巻八号一六五六頁)。

申立外大山隆が前記期間他に就職して得た利益は、その期間の受くべかりし賃金額の四割以内であるからその全額控除さるべきものである。

三、よつて、右控除を認めずして全額支払を命じた前記緊急命令は、違法であるから、申立の趣旨記載の如く変更されるよう本申立に及んだ次第である。

(別表省略)

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